かつての日本食こそ「最高の健康食」
アメリカでは癌が減り続けている
日本という国の愚かさを紹介しましょう。
みなさんは、私たちの現代の食生活で、何が一番の問題だと思いますか?
よくいわれるのは、日本人の食生活の欧米化です。
肉食・脂肪過多の欧米スタイルになってから、大腸癌をはじめとするさまざまな癌や生活習慣痛の発生率が上昇したといわれています。
これは確かに事実です。
1981年に死亡数が16万6399人で死因のトップに立った癌(悪性新生物)は、その後も増加の一途を辿り、2004年には32万315人、全死亡者に占める割合は31.1%まで上昇しました。
今や癌の独走状態で、日本人の約3人に1人は癌で死んでいるのです。
では、癌の元凶たる食生活の欧米化(医学者はそう考えていないかもしれませんが)その本家本元であるアメリカではどうでしょうか。
実は現在、アメリカでは癌の屏息率・死亡率ともに減少しているのです。
1998年に米国癌協会(ACS)や疾病抑制予防センター(CDC)などの合同研究チームが発表した報告書によると、アメリカ国民の癌催患率は1973〜1989年は毎年平均1.2%ずつ増加していたのに対し、1990年以降は減り始め、1990〜1995年は毎年平均0.7%ずつ減少、死亡率も5年間で2.6%(年平均0.5%)低下しました。
こうした傾向は、男女別、年齢層別、人種別に見ても同じです。
1996年以降の調査はまだ発表されていませんが、1992〜1998年では罹患率、死亡率とも年平均1.1%の減少という報告があります。
なにしろ人口の多い大国ですから、1999年には約122万人が新たに癌と診断され、1日に1200人が癌で死亡するという計算になります。
しかし、アメリカの死亡原因の第1位は心臓病であり、癌は第2位というのが現状です。
日本人の食生活が欧米化を遂げ、癌の発生に歯止めがかからなくなっている一方で、アメリカは日本より先に痛の魔の手から逃れつつあります。
では、この差はいったいどこにあるのでしょうか?
日本もアメリカも、人間の体 − それをつくる食生活の面についていえば、その歩みは似ています。
経済至上主義のもとで、いつの間にか誤った方向へ進み続けてきたのですから。
しかしアメリカでは、その誤った方向から国を挙げて大きく是正しようという動きも生まれました。
その最初が1977年に出された『マクガバン・レポート』です。
病気と食生活の相関関係を明らかにした『マクガパン・レポート』
アメリカでは今から約30年前の1975年、当時のフォード大統領が上院議会に、大統領直轄の諮問機関として栄養問題特別委員会を設置しました。
その頃、アメリカは癌や心臓病、糖尿病、肥満などの成人病(現在の生活習慣病)を患う人が急増し、国民医療費も急速に膨れ上がったため、「アメリカは戦争ならどこにも負けないが、自国民の病気で滅んでしまうだろう」とまでいわれていたのです。
そこでフォード大統領は疑問に思いました。
「アメリカは医学が進歩している国だ。
これほど医学の発展にお金をかけているのだから、病気の人が減ってもよさそうなものだ。
ところが患者は増え続け、医療費もどんどんかさんでいる。
何かが間違っているのではないか?」と。
この疑問は、至極もっともな話だとは思いませんか?
それから30年も過ぎた現在の日本の状況もまさに当時のアメリカと同じですから、日本は今もアメリカのはるか後方を歩いているといわざるをえません。
フォード大統領はその疑問を究明すべく、栄養問題特別委員会という機関を設置し、関係するあらゆる分野の有能な専門家を集結させ、国家的な大調査を指令したのです。
そしてその委員長に任命されたのが、当時、民主党の副大統領候補でもあったジョージ・マクガバン上院議員でした。
ウォーターゲート事件の情報提供者が名乗り出たことで話題になりましたが、その1972年の大統領選でニクソン候補と争っていたのがジョージ・マクガバン氏です。
さて、フォード大統領に命じられたマクガバン氏ら栄養問題特別委員会は、さっそく19世紀以降のアメリカの病気の変化と、それに対応する食生活の変化を歴史的に追跡し始めました。
すると150年前には陽チフスや結核など、細菌による伝染病で病死する人が多く、癌、心臓病、脳卒中などの病気は皆無に近いことがわかりました。
さらにヨーロッパなどの先進国を調査しても、150年前は心臓病や癌などほとんど見当たりませんでした。
そして調査地城を広げて世界の各国を見てみると、アフリカやアジア、中近東などのいわゆる低開発国では、過去はもとより、現在もそうした病気が少ないという事実がわかったのです。
欧米諸国の150年前と現在との違い、現在の欧米諸国と低開発国との違い − そこに共通するのは「食生活の違い」にはかなりません。
栄養特別委員会は、世界中の国々、しかもひとつの国を地域別・人種別・宗教別などに細かく分けて、人々の食生活と病気や健康状態との相関関係を分析しました。
証人喚問に応じて資料レポートを提出した各国の医師、生物学者、栄養学者など専門家だけでも、実に3000人を超える大がかりな調査を実施したのです。
そうして約2年の歳月を費やし、1977年にようやく完成したのが『マクガバン・レポート』です。
正式には『アメリカ合衆国上院栄養問題特別委員会報告書』といいますが、委員長だったマクガバン氏の名を取り、今や世界中でそう呼ばれています。
わが国の現状を思うと、約30年前にこのレポートを公表したアメリカの先進性に敬意を表したくなります。
『マクガバン・レポート』は全5000ページにも及ぶ膨大な報告書で、その内容はもちろん多岐にわたります。
ここで、マクガバン・レポートに書かれていることをもう少し詳しく解説しておきましょう。
まず、レポート中に「現代の医師は栄養素の知識をまったく持っていない」とあります。
これが書かれたのは1977年で、現在のアメリカは栄養素の知識を持つ医師が増加しました。
レポートの警告が効を奏した結果といえます。
一方、日本の医師界では、いまだに栄養学が重視されていません。
栄養素に関する授業を必須科目として取り入れている医科大学や医学部は、片手で数えられるぐらいしか存在しないのです。
もっと驚くのは、医学部の大学入試センター試験で、生物が必須科目に入っていないことです(現在は「理科3教科必須」にしている大学が増加してきている)。
文部科学省はこれを憂慮し、2004年度のセンター試験から、学部によっては生物を必須科目にできる形で時間割に変更することを発表しました。
現行のセンター試験は物理、化学、生物の3科目から2科目を選択するスタイルで、生物は試験で点数を取りにくいために選択する受験者が少なく、それが受け入れ側の医大や医学部で問題視されるようになったからです。
生体のしくみを学ぶ科目である生物を履修しないで医者になろうというのですから、受験システムには門外漢の私でも首を傾げたくなります。
実は、マクガバン・レポートに、
「世界で1ヶ所だけ、理想的な食生活を行っている国がある。事実、その国の人々は健康である。私たちは彼らの食習慣を見習うべきだ」
という内容で称えられている国があります。
それはほかでもない、日本でした。
とはいいましても、それは現代の日本ではありません。
今から300年以上前の元禄時代の日本です。
マクガバン・レポートは、
「動物性の脂肪や、精製・加工した糖分を減らす。
野菜や豆、海草などの植物性食品を多く摂る。
炭水化物を増やし、しかもそれは未精白なものが望ましい」
という食事の改善目標を提示しています。
元禄時代以前の日本の食事といえば、精白しない穀類を主食に、季節の野菜や海草や小魚といった内容に違いありません。
このような理想にぴったり当てはまった日本を名指ししてくれたおかげで、マクガバン・レポートの発表後、アメリカでは日本食ブームが巻き起こりました。
「日本食=健康食」というイメージがひとり歩きしてしまったのです。
それでも1960年代頃までの日本人の食事は、元禄時代ほどではなくても少しはマクガバン・レポートの賞賛に値する部分があったといえるでしょう。
事実、現代日本で「長寿」の称号を得ているお年寄りのみなさんは、高炭水化物、低脂肪、低カロリーの伝統的日本食を摂ってきました。
動物性脂肪は肉よりも魚で摂取し、タンパク質も大豆などの植物性タンパク質、そして何より野菜や海草などの植物性食品を日常的にたくさん摂っていました。
50歳代の私もまた、成長期までは確実に昔ながらの日本食を続けてきた世代です。
ところが、21世紀を迎えた現在ではどうでしょうか?
その点で、私は今の若い人たちにお詫びをしなければならないと思っています。
今の30歳代が誕生した頃、日本はすでに食習慣を変えつつありました。
20歳代以下の人となると、生まれたときからハンバーガーやフライドチキンのチェーン店が当たり前のように存在していますし、コンビニエンスストアへ行けばすぐに食べられる添加物いっぱいの加工食品が並んでいます。
電話をすれば高カロリー高脂肪のピザがものの30分で家に届く今の日本では、忙しいお母さんが片手間につくる食事より、ファミリーレストランのメニューのほうが好物という子どもも多いと聞きます。
しかし、それを食べ続ける子どもたちを責めるわけにはいきません。
子どもたちは何も知らないだけで、罪があるのはそんな食環境をつくってしまった私たち大人です。
しかも、それまでずっとその後ろ姿を追い続けてきたアメリカという大国が、マクガバン・レポートという現代社会への警告書を30年近く前に発表しながら、日本は今日まで見向きもしなかったのです。
アメリカではその後も国をあげての「食と健康」の取り組みが国民に少しずつ浸透し、1997年に『食品と栄養と癌予防:世界的展望』というレポート − 世界癌研究財団とアメリカ癌研究財団がまとめたもので、世界中から食品と栄養素と癌予防の関係について書かれた約4、500件の学術論文を集め、15人の専門学者が3年半をかけて多角的に解析している − がまとめられ、
その研究分析による結論として『癌予防14ヵ条』という提言が発表されたときには、アメリカのサプリメントの売上げが約5割ダウンしたといわれています。
また、これと同時期にアメリカの3万5000件のスーパーマーケットでは、お互いに協力し合い、野菜摂取を呼びかける運動を展開しています。
それが国民のオーガニック人気へと発展していったのです。
アメリカのオーガニック市場は1990年代半ばから毎年20〜25%の成長率を見せ、2003年の売上高は130億ドル(日本円で約1兆4000億円)を超えました。
従来からの食品の売上高伸び率は3%ですから、その急成長は驚異的といえるでしょう。
そしてそれは結果的に、オーガニック農家の数・質の大幅な向上を生み出したのです。
『食品と栄養とガン予防:世界的展望』によるガン予防14ヵ条
- 第1条/食事は植物性食品を中心とする。 野菜、果物、豆類、精製度の低いデンプン質の主食など、できるだけ多様な種類の食物を摂る。
- 第2条/体重はBMI(日本では体重kg/(身長m×m)の数値)18.5〜25を維持して肥満を避ける。
- 第3条/運動は1日1時間の早足歩きと、1週間に合計1時間の強度の運動を行い、体を動かす習慣を維持する。
- 第4条/野菜・果物を1日に合計400〜800g摂る。
- 第5条/野菜・果物以外の植物性食品としては、1日に合計600〜800gの穀類・豆類・いも類・バナナなどを摂る。
- 第6条/飲酒は勧められない。 アルコール類を摂るなら男性は1日に2杯(ビール500ml、ワイン200ml、ウイスキー50ml、日本酒1合)以下、女性は1日1杯以下に控える。
- 第7条/赤身の肉(牛肉、羊肉、豚肉など)は1日80g以下に抑える。
- 第8条/総脂肪量を減らし、総エネルギー量の15〜30%の範囲にとどめる。 とくに動物性脂肪を控え、植物油を使用する。
- 第9条/塩分は1日6g以下に抑える。 香辛料やハーブ類を使用するなどして、減塩のための工夫をする。
- 第10条/カビ毒に注意する。 食べ物を常温で長時間放置せず、カビが生えたものは食べない。
- 第11条/腐りやすい食品は、冷蔵庫か冷凍庫で保存する。
- 第12条/食品添加物や残留農薬に注意する。 適切な規制下では添加物、汚染物質、その他の残留物はとくに心配いらない。
- 第13条/黒こげの食べ物を避け、直火焼きの肉や魚、塩干し燻製食品は控える。
- 第14条/栄養補助食品は、以上の勧告を守ればあえてとる必要はない。
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