広島の焼け野原に芽を出した麦の強さ

自然農法で無農薬の食物が簡単に手に入るようになるまで、待ち続けることもできません。
別の機会に、植物栄養物質の摂取に優れた緑汁について、その製法の違いによる効果を紹介しますので、楽しみにして下さい。
緑汁といっても、酵素や栄養素が破壊されたものでは意味がありません。
その点からいえば、熱を加えずに、低温処理によって粉末加工されたものが一番です。
健康食品としての緑汁の粉末製品は、麦若葉のジュースを絞り、瞬間噴霧乾燥製法(スプレー製法)で粉末製剤化されます。
なぜ身近な稲ではなく麦の若葉が使われるかというと、これは製造上の問題です。
稲は田んぼで水耕栽培されるため、稲葉には土壌菌の付着が多いこと、そして水田での若葉の収穫が困難であるなどの事情があります。
そこで、栄養成分的にも同等の畑で栽培される麦が注目されることになったわけです。
麦には、大麦や小麦、古代麦であるカムート麦等があり、このなかで現在、健康食品として市場に多く出回っているのが大麦です。
当初、小麦若葉が使われなかった理由は、葉の裏に大麦若葉にはない細かい毛が生えており、若葉を水洗いしただけではこの毛に付着した土壌菌を取り除けないことと、一般の大麦若葉粉末のように高温で乾燥処理して菌を殺し、そのまま粉末にする製法ではないことによります。
このような理由により、栄養価をそのまま私たちの身体に取り入れるジュースからのスプレー製法が可能なものとして、大麦の若葉が選ばれました。
大麦と小麦は生産される土壌が同じであれば、含まれる栄養成分的に大きな差はありません。
ではここで、麦類の若葉が私たち人間に貢献している実例をご紹介しましょう。
麦類は、植物分類学的には「イネ科」に属する逆境に強い種で、広島に原爆が投下されて一面無生物の状態になった後、最初に地表に出現したのが「イネ科」の植物だったといわれています。
それは、SOD(活性酸素除去酵素)をはじめとするタンパク系、イソビデキシンなどのフラボノイド抗酸化物質を多く持ち、また農薬や化学物質を分解する酵素を多く持っているためだろうといわれています。
多くの加工食品に使われる食品添加物に「ソルビン酸」がありますが、これを麦若葉の液に溶かし、時間の経過に従って分析してみると、ソルビン酸が短時間で分解されて消滅することがわかります。
この麦若葉液を煮沸してからソルビン酸を加えると、この分解が進まないことから、麦若葉の成分が温度(熱)によって変性し、失われるタンパク系の物質に、この化学物質分解作用があるものと思われます。
これらの作用は、言い換えれば植物が自分自身を守るための免疫メカニズムに相当するものです。
農薬や化学物質を分解し、自身を守れなければ、植物自身の生命維持はできません。
そして私たち人間もこの植物の免疫力と同じように少量の農薬・化学物質等を解毒・排泄して生命を維持しています。
この似ているメカニズムを人類は取り入れ、人間の健康回復に役立ててきたのです。
麦若葉ジュース粉末の製法と特徴
麦には硬い茎があり、また大切な栄養成分は細胞内にあり、しっかりとした細胞膜に守られています。
そのため、この硬い組織を処理して内側の栄養成分をジュースとして絞り出すアイデアが生まれました(牛はこの細胞膜を溶かして植物栄養成分を消化吸収するために4つの胃袋を使います)。
25cmから35cm程度に成長した麦の葉を刈り取り、水洗の後、細かく裁断し、ジュースを絞ります。
このジュースの状態になりますと、麦の酵素成分(エンザイム)が活性化され、急速に自己消化が始まり、私たちにとって大切な生理活性成分の分解が進むために、ただちに酵素(エンザイム)を休眠状態にする必要があります。
そこで、温度の影響の少ない瞬間噴霧乾燥(スプレー製法)を行い、乾燥粉末の状態をつくります。
このときの問題は、もともと麦のジュース中の固形分は3~4%(残りは水分)と少なく、このままスプレー乾燥すると乾燥タンク内の壁に吸着し、食品の粉末がごくわずかしかできないことです。
そこで、タンクの壁に吸着させずに食用として使える量を確保するために、絞ったジュースを減圧の下で3分の1~4分の1に濃縮し、キャリアーとしてマルトデキストリンを加え、スプレー乾燥させます。
この製法の最大の特徴は、生産工程で高温にさらされることがないため、タンパク質の栄養成分の変性が少なく、その結果、SODをはじめとするエンザイムの活性が保たれ、クロロフィルが生かされる点にあります。
また、絞ってジュースにすることで繊維成分を除去しているため、完全に水に溶け、口当たりがスムーズになります。
しかし、この製法にも問題がないわけではありません。
次の3つの問題点が挙げられます。
(1)一般生菌数の問題
絞ってジュースにして粉末にする工程に4時間ほど要しますが、その間、温度は 36~38度くらいで、この間に細菌の増殖があります。
そのため、温度の上昇1度くらいの差でできあがった製品を破棄しなければなりません。
(2)エッセンシャルオイル(フィトンチット)の残留が少ない
みなさんも手足を伸ばして草原に寝転んだときに、苗くさい華の香りをかいだことがあるのではないでしょうか?
その香りがフィトンチット・エッセンシャルイルと称されるテルペン類で、現在では強力な抗酸化作用や抗ストレス、精神安化作用を持っていることが判明しています。
しかし、この多くは絞ったジュースを濃縮していく工程で、水と一緒に揮発飛散してしまうのです。
(3)デキストリンの量
ジュースを粉末にするために、減圧濃縮の限界をデキストリンで補っています。
そのため、100%の麦若葉粉末とはいえません。
一般の大麦若葉を乾燥させ粉末にする製法
一方、市場では、「まずい! もう一杯!」の宣伝が功を奏したケールの青汁や、スプレー製法という時間と経費のかかることよりも、安く製品化して対抗しょうというメーカーも多数出現し、青汁ブームが起きて飛ぶように売れました。
ある製薬会社では、大麦若葉を直火で乾燥(140度に熱した鉄板の上で)させ、そのまま粉末にしてスティックに入れ、販売しています。
以来、同様の方法で粉末化したものが、中国・オーストリアで生産され、大量に輸入されていますが、栄養面からいえばスプレー製法には遠く及びません。
ではここで、一般の大麦若葉を乾燥させ粉末にする製法について具体的に紹介しましょう。
まず、25cmから35cmに生育した若葉を収穫し、水洗後、熱でブランチング(若葉を熱湯でゆで、クロロフィルを分解する酵素・クロロフィラーゼを失活させ、緑色を保つ方法)し、緑色を固定します。
その後、キルンという乾燥機で水分含有量が5%以下になるまで乾燥させ、パンチミル、ハンマーミルにて粉砕します。
この一般乾燥法の特徴としては、次の4点が挙げられます。
(1)100%の麦若葉の粉末ができる
ジュースからの粉末ではないので、デキストリンなどが不要です。
(2)熱処理をするため、一般生菌は少ない
(1)および(2)が、前述のスプレー製法に比べての利点となります。
(3)SODの働きが残っていない
熱処理をするため、タンパク質の成分は完全に変性してしまいます。
つまり、麦 若葉最大の特徴である抗酸化酵素SODなどの働きはまったく残っていません。
いわば「わら」の粉末で、ただの繊維(ファイバー)だけの食品になっています。
(4)エッセンシャルオイルがすべて飛散している
高温で処理するために、水分と同時に揮発性の物質であるエッセンシャルオイル はすべて飛散してしまいます。
以上の通り、麦若葉の乾燥粉末は不足しがちな繊維質(ファイバー)の補給としての利点はあっても、肝心の不足しやすいミネラルやビタミン、タンパク質SOD酵素等の栄養面からいえば、ジュースからのスプレー製法にはとうてい及ばない内容だといえます。
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