健康のカギは人間本来のミネラルバランスを保つこと
ミネラルは体を健全な生理的条件で維持していくうえでも重要な役割を果たしています。
たとえば、健康な体の皮膚は弱酸性の薄い膜で覆われ、その内側の体液は弱アルカリ性に保たれています。
もし弱アルカリ性の体液が酸性に傾いていくと、それは「酸性体質」「体液の酸性化」といって、すべての代謝病を招く原因になってしまいます。
もちろんこれは、体液が本当に酸性になりきってしまうという意味ではありません。
健康な人体はPH7.35〜7.43の弱アルカリ性に保たれており、それが7.30まで酸性に傾くと健康を害し、7.20に至ると死亡します。
したがって、「酸性体質」「体液の酸性化」とは、実際には体液が中性に傾くことをあらわします。
いずれにしても、ミネラルが不足していたり、あるいは多量に摂取していてもミネラルバランスの崩れた摂取であった場合、体は危険な状態になります。
ミネラルは欠乏するとさまざまな弊害を体にもたらしますが、ミネラルバランスが崩れることもまた、欠乏と同じくらい注意が必要です。
このミネラルバランスがいかに重要であるか、例を挙げて紹介しましょう。
体内の細胞は、内側が細胞内液、外側が血液やリンパ液などの細胞外液に浸かっています。
ミネラルはそのどちら側にも存在し、血液によって運ばれてきた栄養分や酵素や水分を細胞内に入れたり、老廃物を細胞外に出したりする「電解質」として働きます。
細胞外液には、ミネラルのなかでもナトリウムとカルシウムが多く含まれています。
一方の細胞内液には、カリウムとマグネシウムが多く含まれています。
この4つのミネラルのバランスがとれていると、栄養や酵素や水分の補給、老廃物の排出がスムーズに行われます。
しかし、たとえば現代人のように塩分を摂りすぎてナトリウムが増え、その一方でカリウムが不足していると、カリウムが少ない分だけナトリウムが細胞内に入ってきてしまいます。
液体には、濃度の低い方へと流れる性質があるからです。
こうして細胞内のナトリウムの量が増えると、ナトリウム主導型の体になり、細胞の分裂速度が早まります。
おなかに胎児がいるとき、子宮のなかで胎児を取り巻いて保護しているのは羊水ですが、この羊水もナトリウム主導型の液体です。
わずか40週間の間に3000g前後の赤ちゃんを胎内でつくれるのは、ナトリウム主導型の羊水のなかで、大変なスピードの細胞分裂を繰り返しているからです。
赤ちゃんを胎内で育てるための細胞分裂ならいいのですが、これがもし癌細胞だったとしたらどうでしょうか?
実際、癌を患っている人のほとんどはナトリウム主導型の体になっています。
塩分を摂りすぎるのでナトリウム過多になり、その一方で野菜や果物など植物性食品をあまり食べていないのでカリウムが不足するのです。
ところで、人間の体を構成している元素の割合は、不思議なことに海や大地(土壌)の構成元素と非常によく似ています。
いずれも水素、酸素、炭素、窒素の4つの主要元素が全体の大半を占め、カルシウムやリンなどのミネラルが微量ずつ含まれた構成となっているのです。
とくに似ているのは血液と海水です。
血液は0.9%、海水は3.8%と濃度は異なりますが、含まれるミネラルの構成と比率が非常に近似しています。
これは人間が、というより人間が進化してきた生物の祖先が、海から生まれたことに関係しているのではないでしょうか。
ダーウィンの進化論に沿っていえば、人間は両生類から陸に上がってきたことになります。
血液が含んでいるミネラルは、上陸するときに「命の養分」として海から取り込んできたという説があります。
それらを裏づけるように、子宮内の胎児を取り巻く羊水も、海水のミネラルバランスにとても近いのです。
海だけでなく、大地のミネラルバランスも人間の体内に似ています。
人間はそこで育った野菜や穀物を食べ、体内ではつくることのできないミネラルを補給しています。
しかし残念ながら、私たち人間は、大地のミネラルバランスを崩してしまいました。
バランスが崩れているという以前に、「土に含まれるべきミネラル自体が欠乏している」と表現したほうがいいかもしれません。
そんな土を寝床に育った野菜や穀物や果物などは、もちろん昔のものに比べてミネラルの含有量が減っています。
私が現代人のミネラル不足に関して、最も大きな問題だと思うのは実はこの「土」の問題です。
ミネラルが枯渇してしまった日本の農地
前述のように、私たち人間はもとより、ほかの動物も植物も、自分の体内でミネラルをつくることはできません。
結局のところ、私たちはその多くを「土」から摂取するしかないのです。
ここで、ミネラル研究の第一人者、ジョエル・D・ワラック博士の言葉を引用したいと思います。
「穀物、野菜、果物、木の実は、ビタミンA(β−カロテン)、全種のビタミンB、ビタミンC、E、Kをつくり出すことができます。
イーストを照射させてビタミンDも生み出すことができます。
事実、植物はすべてのアミノ酸と必須脂肪酸をつくり出すことができます。
しかし、食料にしている植物を含むすべての植物は、「ミネラルをつくり出せない」という限界があるのです。
植物はミネラルをつくり出せず、植物中のミネラルはすべて地中からきているのです。
しかし地中には、まんべんなくすべてのミネラルがあるわけではありません。
地中のミネラルは不均等に散乱しています。
ですから食事を摂っても、すべての必要とする栄養素を摂取できるわけではないのです」
だからこそ、「ミネラルと土」は、切り離して考えることはできないのです。
では、日本の「土」は今、どのようになっているのでしょうか。
植物は成長するとき、土壌からミネラルを吸収するため、その分、土壌からミネラルは失われるわけですが、成長後に枯れた植物が自然の堆肥となって土に戻りますから、以前はそれで土壌のミネラルが補われていました。
一方、「植物」が食べ物として採取される農地も同じことでした。
昔は人糞や残飯を肥料として使っていたので、ミネラルはそれらを通してリサイクルされていたのです。
ところが、今ではどうでしょうか。
下水やゴミの処理場にいってしまい、ミネラルが農地に戻ってくることはありません。
化学肥料が先進国で市販されるようになったのは、1908年のことです。
人間にとって、タンパク質と脂質と糖質という三大栄養素があるように、農作物にも窒素・リン酸・カリウムという三大栄養素があります。
この3つのミネラルを使った化学肥料が1908年に一般化し、日本にも1938年頃から出回り始め、1964年の東京オリンピックを機に日本全国へ広まったのです。
窒素とリン酸とカリウムを与えると作物が豊富に育つため、この化学肥料はあっという間に普及しました。
現在、農地で最も使われている肥料もこれですが、実は大きな問題を抱えています。
成分のほとんどが窒素・リン酸カリウムで、ほかのミネラルを含んでいないことです。
植物の必須ミネラルは、現在までに確認されているものだけで、三大栄養素のほか、水素、炭素、酸素、カルシウム、マグネシウム、硫黄、塩素、ホウ素、鉄、マンガン、亜鉛、銅、モリブデンの計16種類あります。
どの元素が欠けても植物は健全に生育することができません。
日本の農地で窒素・リン酸・カリウムの肥料が使われだした頃は、土壌にまだほかのミネラルが豊富に存在していました。
しかし糞尿や残飯などによるミネラルのリサイクルを行わなくなって久しい現在、農地からは3種以外のミネラルが枯渇してしまったのです。
年輩の方ほど、「最近の野菜は、濃厚な味がしなくなった」と感じている人が多いようですが、この大きな原因のひとつはミネラル不足です。
土壌に本来あったはずのミネラルが不足しているため、人参らしい味、トマトらしい味、ピーマンらしい味が失われてしまったのです。
本当の無農薬有機栽培
また、近年少しずつ有機栽培や無農薬の野菜が増えていますが、一般によくいわれる「有機栽培や無農薬の野菜は虫に食われて当然」というのは、実は誤った認識です。
土壌のミネラルをバランスよくたっぷり含んだ作物なら、化学肥料や農薬を用いない有機農法であっても、虫を寄せつけない酵素をみずから生成できるのです。
完全な栄養を蓄えている作物は、害虫に食べられることなく、きゅうりや大根、人参もまっすぐに形よく育ちます。
つまり、「有機農業ならミネラルをリサイクルできるから、ミネラルをたっぷり含んでいる」とは限らないのです。
何十年もの間、ずっと栽培と収穫を繰り返し、窒素・リン酸・カリウムの化学肥料を使ってきたような土壌では、急に有機農法に切り替えたからといって、ミネラル不足を簡単には解消できません。
そんな土地で有機栽培を始めれば、あっという間に害虫にやられてしまいます。
欧米の国々ではずいぶん以前から、このことが常識として重視されてきました。
19世紀ドイツのリービッヒ博士は、構成比率より供給量の少ない元素が1種類でもあれば、植物はその最小比率の元素の量までしか成長しないことを発表しました。
また、1945年にはイギリスの農業試験場で、ミネラルの欠乏した植物に各種の異常が発現することが証明されました。
私も今から15年ほど前、アメリカのカリフォルニア州で無農薬有機栽培の農場を見学したことがあります。
もともとは別の用件で滞在していたのですが、ロサンゼルスからサンディエゴへ向かう途中のラホヤのストアで、売られている野菜やフルーツを見て驚いたのがきっかけでした。
なぜなら「無農薬有機栽培」と表示されているのに、レタスもオレンジもはちきれんばかりに健康で、形も「これぞレタス」といいたくなるぐらい美しかったのです。
日本で無農薬有機栽培の作物といえば、形はいびつで当然、虫に食われているのは農薬を使っていない証拠とされていましたから、私は「これが無農薬有機栽培のわけがない」と思い、その農場へ見学に行ったのです。
しかしその農場では、本当に無農薬の有機栽培を行っていました。
同行した数人でこっそりあちこちを探ってみたのですが、農薬を使っている気配はまったくありません。
見学が終わった後で話をうかがいに事務所へ入ると、害虫と益虫の写真を載せた大きなポスターが貼られていました。
「この益虫が害虫を食べてしまうから、うちの作物は無農薬でも害虫に食べられない。
そして作物が健康に美しく育っているのは、これらのミネラルを使っている有機栽培だからだ」
と農場のスタッフが教えてくれました。
示されたリストのミネラルの種類を数えると、驚いたことに45種類もありました。
「いったいなぜ、こんなに多種類のミネラルを使っているのですか?」
と尋ねたところ、「カリフォルニアでは40種類以上のミネラルを含む農地を使わなければ、有機栽培とうたうことができない」というのです。
私が不勉強だったので恥ずかしい話ですが、国際社会ではそのように、農作物にミネラルが不可欠なことは常識になっているとのことでした。
そしてアメリカでは無農薬有機栽培の基準に、土壌に40種類以上のミネラルが含んでいることを条件として加えていたのです。
これは日本との大きな違いで、日本ではお金を出してもミネラルたっぷりの無農薬有機栽培の野菜を手に入れることは非常に困難です。
もともとの絶対量も少ないですし、何よりもミネラルの含有量を判断する基準が何一つ存在しないのですから。
窒素・リン酸・カリウムという三大栄養素にばかりに注目し、ミネラルをおろそかにしてきた日本の農作物は、一見健康そうに見えながらその実、本来もつべき栄養素もなければ、農薬なしに育つこともできないのです。
これではまるで今の日本人のようではないか − そう感じてしまうのは、私だけでしょうか?
タンパク質、脂質、糖質という三大栄養素だけは摂取量が豊かになり、体格は大きくなりましたが、健康からはどんどん遠ざかっています。
ミネラル・ビタミンといった微量栄養素から目をそらし、病院・薬に健康を委ねているので、医療費は増加の一途をたどっている −。
これまで日本では、国も医学界も農学界も、ミネラルの研究を後回しにしてきたため、その重要性が浸透しないまま今日にいたってしまいました。
しかし、アメリカでマクガバン・レポートが発表されたように、農学界でも世界ではさまざまな国の研究者・学者がミネラルの重要性を唱えていながら、日本はそこから何一つ学ぼうとしてきませんでした。
世界どころか、国内でもこうした研究発表はあったのですが、やはり黙殺されてきたのです。
農薬メーカーや機械メーカーの圧力でもあったのでしょう。
いずれにしても、人間の健康と経済の発展を天秤にかけて、後者だけをとり続けてきたのです。
自給率がカロリーベースで40%、穀物自給率となると30%にも満たない国など、先進国では日本以外にありません。
土を捨ててしまった日本のツケが、今、国民の健康を脅かすという悲劇を生んでしまったのです。
かつて、「玄米4合ト味噌ト少シノ野菜ヲ食べ、雨ニモ負ケズ、風ニモ負ケズ」 で働いた時代の食事は、炭水化物中心に見えますが、無農薬で化学肥料も使わないで、虫にも食われず生育し、人間の口に入ったということは、かなりの種類のミネラルが含まれていたと推測されます。
この時代の食事に欠けていた栄養成分は少量のタンパク質であったことから、戦後、学校給食で脱脂粉乳のミルクが供給されました。
その後、東京オリンピックを機に乳製品や安い肉がどんどん輸入され「米を食べると低能になる、パン食にせよ」という医師の本も売られ、一気に高タンパク・高脂肪・高糖質の食生活を歩み始めました。
さらに農地には前述のように窒素・リン酸・カリウムの化学肥料が使われるようになり、一方で専売公社なるところの化学塩(塩化ナトリウム)を食べるよう統制され、日本は深刻なミネラル欠乏国へと突き進んできてしまったのです。
まずは食生活を見直し、「植物ミネラル」で補足する
では、私たちは私たちの健康に重要なミネラルを、どのようにして摂取すれば一番よいのでしょうか?
ミネラルは前述したように、私たちの体内でつくることはできません。
私たちがミネラルを摂取するとしたら、
- ●土壌から養分を吸収して育った植物を食べる
- ●その植物を食餌にして育った動物を食べる
- ●ミネラルを含有した薬やサプリメントを摂る
しか方法がないのです。
土壌がミネラルの供給源であるのなら、そこに含まれている種類のミネラルを、バランスよく摂取するのがベストだというのが私の考えです。
今のところ、人体の活動にかかわっているとされるミネラルは約30種類ですが、本当はもっと多いのではないでしょうか。
ミネラルに関する研究はまだまだ研究途上で、これまで新しい分析方法の研究や技術の進歩とともに、その数は増えてきました。
人間が含有する量は極めて微量なので、まだ分析できていないだけだとすれば、今後も増えていくだろうと予想されます。
だとすれば、できるだけ土壌に近いミネラル〜それを吸収した植物からすべてのミネラルを摂取するのが理想的です。
しかし残念ながら、前述のように日本の土は、すでに本来のミネラルを含んでいません。
無農薬有機栽培で、かつてと同じくらいミネラルを十分に含んだ農作物は、現在の日本で手に入れるのは不可能に近いのが現状です。
ですから、ただでさえミネラルを「奪われる」食環境に囲まれている私たちは、一日も早く日本の農業を変えていくことが重要なのです。
そして農業が、土が本来の力を取り戻すまでの間、私たちにできることは、まず食生活を見直し、少しでも多くのミネラルを摂取するよう注意を払うことです。
そしてそれでも足りない「補足」としてサプリメントを摂取する必要もあるでしょう。
そのため、私はサプリメント先進国であるアメリカへ通い、代表的なミネラル製品を取り寄せ、さまざまな側面から調べてみました。
アメリカでは実に数十種類ものミネラルのサプリメントが市販されています。
私は20年程前からマルチミネラルと称するサプリメントを個人輸入し摂取してきました。
もちろんマルチビタミンも、プロテインも毎日取り入れていました。
しかし、仕事でほとんど休みのない日がつづき10年前に気管支炎から気管支喘息の症状で苦しむことになりました。
喘息の苦しみから現在に至るまでの経過だけでも、ストーリーとしては1冊の本になりそうです。
私は喘息の専門医の治療を受け、苦しい症状から免れている時に必要な栄養物質で身体の細胞レベルから回復させるにはどうしたら良いか考えさせられるという幸運がありました。
その時に野菜・果物・穀物の植物栄養素と植物由来のミネラルを摂取して、体力を回復させる体験ができたのです。
その結果、現在私が自信を持ってお勧めできるのは、「植物ミネラル」と呼ばれる種類のサプリメントとオーガニックの大麦・小麦の植物エッセンスの食品です。
「植物ミネラル」はその名の通り、植物がいったん吸収したミネラルから抽出したもので、前述のワラック博士が勧めているものでもあります。
私たちにとって本当に必要なサプリメントとは何なのか、現状のサプリメントの問題点も含めて考えていく必要があると思います。
次回にそれを解説していきましょう。
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